世界初 ハイブリッド スポーツカー i-VTEC搭載 ホンダ・CR-Z

CR-Zは、本田技研工業(Honda)が2010年から2016年まで製造・販売していたハイブリッドスポーツカーです。特徴としては、燃費性能とスポーティな走行性能を兼ね備えた車両として、主に若年層をターゲットにしたモデルでした。CR-Zは、「Compact Renaissance Zero」の略称で、クリーンで省エネなスポーツカーの復活を意味しています。
ハイブリッドシステム

CR-Zには、ガソリンエンジンと電動モーターを組み合わせた「IMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)」ハイブリッドシステムが搭載されていました。これにより、燃費効率の向上を図りながらも、スポーティな走行を楽しめるよう設計されています。
エンジン

CR-Zは、1.5リッター直列4気筒i-VTECエンジンを搭載しており、電動モーターのアシストにより加速性能を向上させています。初期モデルでは、6速マニュアルトランスミッション(MT)と無段変速機(CVT)の選択が可能でした。
デザイン

CR-Zは、低く幅広いスタンスを持つクーペスタイルのスポーツカーで、ホンダの過去の名車「CR-X」を彷彿とさせるデザインが特徴です。特に、リアのハッチバックスタイルがCR-Xの遺伝子を感じさせます。
ドライビングモード

CR-Zには、3つのドライビングモード(スポーツ、ノーマル、エコ)が搭載されており、運転者が走行シーンや気分に応じて最適なパフォーマンスを選ぶことができました。「スポーツ」モードではより敏捷な加速が可能になり、「エコ」モードでは燃費が最大限に向上します。
燃費性能

ハイブリッドカーとしての燃費性能も優れており、特にCVTモデルでは、燃費が20km/L以上と発表されていました。ただし、スポーツ性能を追求した設計のため、実燃費は15km/L程度と他のハイブリッド車に比べると燃費重視の車とは一線を画していました。
CR-Zが売れなかった理由
CR-Zは、ハイブリッドスポーツカーとして燃費性能とスポーツ性能を両立することを目指していましたが、どちらの面でも「中途半端」と感じる消費者が多かったです。
1.5リッターのエンジンとハイブリッドシステムを搭載しているものの、他のスポーツカーと比べるとパワー不足だと感じる人が多かったです。特に「CR-Xの後継車」として期待されていたこともあり、過去のスポーツモデルに対する期待値が高すぎたことも影響しています。
他のハイブリッド車に比べて燃費性能がそこまで突出していなかったことも売れ行きに影響しました。特に、トヨタのプリウスなど、燃費に特化したハイブリッド車と比較され、スポーツカーとしての性能に寄り過ぎたため、燃費を重視する層からの評価が低かったです。
若い世代をターゲットにしていたにもかかわらず、CR-Zの価格設定は比較的高めでした。そのため、若い世代が手軽に購入するには負担が大きく、結果的に購入を見送るケースが多かったです。

環境志向の消費者に対しても、燃費性能だけでなくスポーティな外観や走行性能を持つCR-Zは、エコカーとして魅力を感じにくかったことが影響しています。エコを追求するならもっと燃費の良い車、スポーツ性を重視するならもっとパワフルな車という、はっきりした選択肢が求められたため、CR-Zはそのどちらにも完全には応えられませんでした。
CR-Zが発売された2010年代は、スポーツカー市場そのものが縮小していた時期でもありました。多くの消費者が実用性や燃費、快適性を重視する傾向にあり、2ドアクーペのスポーツカーというジャンルの人気が低下していました。
同時期に市場で大きな成功を収めていたトヨタのプリウスは、燃費性能で圧倒的な支持を集めていました。CR-Zが競合するのは難しかったです。
CR-Zのデザインはスポーティでスタイリッシュですが、2ドアクーペというフォーマットは実用性に欠けるという評価もありました。日常の使い勝手や後部座席の狭さ、荷物スペースの小ささなどが、ファミリー層や実用性を重視する層にとってはマイナス要因となりました。
総括
CR-Zは2016年に生産終了となりましたが、コンパクトで楽しいスポーツカーとしての魅力と、環境への配慮を両立したユニークな存在として、多くのファンに愛されました。